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五十肩(肩関節周囲炎)の鍼灸治療

五十肩などの肩関節の症状で来院される方は多く、鍼灸で治療効果がある代表的な疾患です。

肩関節の痛みの原因はいくつか存在します。原因によっては、鍼灸による治癒が難しい疾患もあるため診断が重要となります。鍼灸院を訪れる一般的な疾患は3つです。

①ローテーターカフ(回旋筋腱板)の拘縮。肩関節は不安定な関節なので4つの筋肉で固定されています。この4つの筋肉を合わせた名称がローテーターカフです。拘縮とは何らかの原因で筋肉に伸縮性がなくなり、関節の動きが悪くなる状況です。

②肩峰下滑液包炎。これは、肩関節を保護する肩関節内の袋の炎症のことです。

③腱板損傷。これは、ローテーターカフが断裂した状態です。

③は鍼灸治療で直接断裂が治ることはありません。治療により周りの筋肉を動かしやすくしたり、筋トレで断裂した筋肉の周囲を鍛えることにより症状を緩和していきます。

下記は60代女性の治療経過です。

右肩の痛みは20代に発症し、動かさなくてもずっと重だるい症状に悩まされていました。今年の夏くらいから症状がひどくなったため10月に来院し治療を開始しました。

理学検査による診断結果は①腱板損傷②肩峰下滑液包炎③胸郭出口症候群でした。

胸郭出口症候群は肩回りの筋肉により腕の神経や血管が圧迫されることにより腕に痛みや痺れが出る疾患のことです。肩を動かさなくてもずっと重だるいという症状の原因になっていると考えられます。

それぞれの疾患に対する鍼灸治療とともに自宅でできるセルフケアを指導しました。治療頻度は週1回で行っていきました。2回目で胸郭出口症候群による右肩の重だるさは緩解されました。5回目で肩関節の痛みが日常生活では気にならないまで緩解しましたが、無理をすると痛みが出るため現在も月1~2回の割合で治療を継続中です。

肩関節の疾患は緩解までに3カ月~1年と長い期間を要することが多いです。この患者さんは2カ月の治療で緩解に近づいていますが、これだけ治癒が早いのは指導したセルフケアを地道に続けるご本人の努力による所が大きいです。

当院でお勧めしているセルフケアは、コッドマン体操という五十肩に効果的な筋力トレーニングとゴムチューブを利用した肩関節周囲の筋肉の筋トレです。

当院では、できるだけ短い期間で緩解できるようご自宅でできるセルフケアを伝えて効果を出しています。