8カ月続く腰から臀部・下肢の重だるい痛み|40代男性の鍼灸施術症例

1.患者様の悩み・施術内容

8カ月ほど続く腰から下肢にかけての痛み

今回ご紹介するのは、8カ月ほど腰から臀部、下肢にかけての痛みに悩まれていた40代男性の症例です。

来院時に詳しくお話を伺うと、腰だけが痛むというよりも、腰から臀部、下肢にかけて重く、だるいような痛みを感じていました。

特に左側の症状が強く、天候によっても症状に変化があり、雨の日や曇りの日になると腰から下肢にかけての重だるさが強くなるとのことでした。

さらに、腰下肢痛だけでなく、

・食欲があまりない
・ときどき吐き気がある

といった消化器の不調もみられていました。

当院では、腰や脚に症状があるからといって、腰や脚だけをみて施術を進めるのではなく、現在どのような症状があり、それがどのように変化しているのかを確認することを大切にしています。

今回も腰下肢の状態に加えて、食欲や吐き気などの身体全体の状態について確認しました。

東洋医学的な視点から身体の状態を確認

今回の患者様には、東洋医学的な評価に基づいて、身体に停滞している「水」のバランスを整えることと、「脾気(ひき)」を補うことを目的とした施術を行いました。

東洋医学でいう「水」は、現代医学でいう体液と完全に同じ意味ではなく、身体の水分代謝などを説明するために用いられてきた伝統医学上の概念です。

また、「脾」についても解剖学的な脾臓そのものを意味するのではありません。東洋医学では、飲食物から身体に必要なものを取り入れ、全身へ巡らせる働きなどを説明する概念として使われています。

今回、食欲不振や吐き気といった症状も確認されたことから、腰下肢だけに施術を集中させるのではなく、こうした東洋医学的な身体評価をもとに施術方針を組み立てました。

なお、「湿気が腰痛を直接引き起こしている」「脾気の低下が腰下肢痛の原因である」と現代医学的に証明されているわけではありません。そのため当院では、東洋医学的な考え方を病名や医学的原因と混同せず、一つの身体評価の方法として用いています。


2.腰下肢痛について

腰下肢痛とは

腰下肢痛とは、一般的に腰だけではなく、臀部や太もも、ふくらはぎなどの下肢にも痛みや不快感を感じる状態を指します。

腰痛は非常に多くみられる症状であり、WHOによると、腰痛は世界的にも身体機能に影響を与える主要な健康問題の一つです。

腰痛と聞くと「腰の筋肉や骨だけの問題」と考えてしまうことがありますが、実際には症状の現れ方は人によって大きく異なります。

腰だけに痛みが出る人もいれば、臀部まで痛む人、腰から脚にかけて痛みやしびれを感じる人もいます。また、「ズキズキする」「刺すように痛む」という訴えだけでなく、今回の患者様のように「重い」「だるい」と表現される場合もあります。

腰から下肢に症状が出る疾患としては、腰椎椎間板ヘルニアや腰部脊柱管狭窄症などがあります。一方で、腰痛のすべてについて画像検査などで一つの原因を特定できるわけではありません。

WHOも、腰痛には特定の疾患や構造的問題によるものと、明確な原因を一つに特定できない「非特異的腰痛」があるとしています。

そのため、症状が長期間続いている場合には、「腰が痛いから腰だけをみる」と決めつけず、痛みの場所、症状の性質、経過、日常生活への影響などを確認することが重要です。


腰下肢痛の原因

腰から臀部、脚にかけて症状が現れる原因は一つではありません。

例えば、腰椎椎間板ヘルニアなどによって神経が刺激されることで、腰から臀部、下肢に痛みやしびれなどが現れる場合があります。また、加齢などに伴う脊椎の変化によって神経が影響を受けるケースもあります。

一方、腰痛の多くは特定の組織や病変だけでは説明できないことも知られています。

WHOは腰痛を、特定の疾患や構造的問題などによって生じる「特異的腰痛」と、明確な原因を特定できない「非特異的腰痛」に分けています。

また、長期間続く腰痛については、身体的な要因だけでなく、活動量、仕事上の負担、睡眠、心理・社会的な要因など、さまざまな要素を含めて評価することが大切です。

今回の患者様には「雨や曇りの日に悪化する」という特徴がありましたが、この症例情報だけから天候が腰下肢痛の医学的な原因だったと断定することはできません。

同様に、食欲不振や吐き気についても、腰下肢痛と同じ原因によって起きていたと判断できる情報はありません。

当院ではこうした症状をすぐに一つの原因へ結びつけるのではなく、「いつから症状があるのか」「どこに症状があるのか」「どのようなときに悪化するのか」「身体全体にどのような変化があるのか」などを確認しながら施術方針を考えていきます。


腰下肢痛のときにやってはいけないこと

腰下肢痛があると、「動くと悪化するのではないか」と心配になり、できるだけ身体を動かさないようにする方がいます。

しかし、腰痛があるすべての人に長期間の安静が必要というわけではありません。

WHOでは、腰痛に対するセルフケアの一つとして、状態に応じて身体活動を保つことなどを挙げています。慢性的な腰痛についても、教育、運動などを含め、その人の状態に合わせた複合的な対応が重要とされています。

そのため、自己判断で長期間寝たきりにしたり、必要以上に活動を制限したりすることはおすすめできません。

一方で、「腰痛は動いたほうがよい」と考えて、強い痛みを我慢しながら無理な運動を続けることも適切ではありません。症状の程度や原因によって対応は異なるため、自分の身体の状態に合わせることが重要です。

また、腰から脚に症状がある場合、すべてを単なる腰痛と自己判断しないことも大切です。

特に、脚の力が入りにくくなるなどの神経症状が進行する場合や、排尿・排便に異常が現れた場合、発熱や外傷などを伴う場合には、一般的な腰痛とは異なる疾患が隠れている可能性があります。

このような場合は鍼灸施術だけで対応しようとせず、医療機関で適切な評価を受けることが重要です。


3.施術経過と結果

今回の患者様には、東洋医学的な身体評価をもとに、余分な「水」の停滞を整えることと、「脾気」を補うことを目的とした鍼灸施術を行いました。

症状の変化を確認しながら施術を継続しました。

4回目の施術後

4回目の施術後には、最初に強く訴えていた下肢の重く、だるい感じが軽減しました。

8カ月ほど続いていた症状だったため、経過を確認しながら引き続き施術を行いました。

7回目の施術後

7回目の施術後には、腰・臀部・下肢に感じていた症状が著しく軽減しました。

また、来院当初にみられていた食欲不振についても変化があり、食欲が出てきました。

腰下肢だけでなく、来院時に確認していた身体全体の変化についても引き続き確認しました。

10回目の施術後

10回目の施術では、腰下肢痛に伴って確認していた随伴症状についても軽減がみられました。

当院では主な症状だけを見るのではなく、初回来院時に確認した症状がその後どのように変化しているかを確認しながら施術を進めています。

13回目の施術

施術を継続した結果、13回目の施術時には今回訴えられていた症状が治癒したと判断し、施術を終了しました。

今回の症例では、4回目、7回目、10回目と段階的に身体の変化を確認しながら施術を進め、最終的に13回の施術で終了となりました。

ただし、これは今回の患者様個人の施術経過です。

同じ「腰下肢痛」であっても、原因、症状の程度、発症からの期間、生活環境、身体の状態などは一人ひとり異なります。そのため、すべての方が同じ回数・同じ経過で改善することを示すものではありません。


4.担当者からのメッセージ

腰から脚にかけての痛みが何カ月も続くと、「このままずっと続くのではないか」「年齢のせいだから仕方がないのではないか」と不安になる方もいらっしゃると思います。

しかし、「腰下肢痛」という同じ症状名であっても、実際の症状の出方は一人ひとり違います。

今回の患者様の場合は、8カ月ほど腰から臀部、下肢にかけて重くだるい痛みが続き、特に左側に強く症状が出ていました。また、雨や曇りの日に悪化するという特徴があり、食欲不振やときどき吐き気を感じるといった腰以外の症状もありました。

当院では、腰が痛いからといって腰だけに注目するのではなく、「どこが、どのように痛むのか」「いつ悪化するのか」「ほかにどのような体調変化があるのか」まで丁寧に確認することを大切にしています。

そのうえで東洋医学的な身体評価も行い、その方の状態に合わせて施術方針を組み立てていきます。

一方、腰から下肢にかけての症状の中には、医療機関での検査や治療を優先すべきものもあります。そのため、鍼灸だけですべての腰下肢痛に対応できると考えるのではなく、症状によっては医療機関への受診をおすすめすることも重要だと考えています。

長く続く腰や脚の症状でお悩みの場合は、一人で我慢を続けず、まずは身体の状態を確認することから始めてみてください。

福津市の若木台はりきゅう院では、問診や身体の確認を大切にし、一人ひとりの状態に合わせた鍼灸施術を心がけています。

※本記事は一症例の施術経過を紹介したものであり、すべての腰下肢痛に同様の施術結果を保証するものではありません。また、東洋医学における「水」「脾気」などは伝統医学上の概念であり、現代医学上の病名・臓器・病態と同一ではありません。