― 冷えは「体質」ではなく、身体からのサインです ―
「昔から冷え症だから仕方がない」
「体質なので改善しないと思っている」
このように感じている方は少なくありません。
しかし、冷え症は生まれつき決まるものではなく、日々の生活や身体の使い方の積み重ねによってつくられる状態です。そして東洋医学では、冷えは単独で起こるものではなく、身体全体のバランスが崩れた結果として現れると考えます。
当院でも、
・手足の冷え
・お腹や腰の冷え
・冷房がつらい
・寝るときに足が冷えて眠れない
といった冷えに関するご相談は非常に多く、年齢や性別を問わず見られます。
冷え症が引き起こすさまざまな不調
冷えは「寒い」「つらい」だけで終わるものではありません。
身体が冷えている状態が続くと、次のような不調につながることがあります。
・疲れが取れにくい
・胃腸の調子が悪い
・肩こりや腰痛が慢性化する
・寝つきが悪い、眠りが浅い
・気分が落ち込みやすい
・生理痛や生理不順がある
これらは一見、冷えと関係がなさそうに見えますが、東洋医学ではすべて「冷えによる巡りの低下」と深く関係していると考えます。
西洋医学と東洋医学の冷え症の捉え方の違い
西洋医学では、冷え症は
・血行不良
・自律神経の乱れ
・ホルモンバランス
といった視点で説明されることが多くあります。
一方、東洋医学では「なぜその状態になったのか」「どこから崩れたのか」を重視します。
単に血流を良くするのではなく、血流が悪くなった原因を探るという考え方です。
東洋医学の基本「気・血・水」
東洋医学では、身体は次の3つの要素によって保たれていると考えます。
気(き)
身体を動かし、温め、守るエネルギー
血(けつ)
全身に栄養や潤いを届ける働き
水(すい)
体内の水分代謝を担う
これらがバランスよく巡っていると、身体は自然に温かさを保つことができます。
冷え症の方の場合、この3つのうち特に問題になりやすいのが**「気」**です。
気が不足すると身体は冷える
気には、
・体温を保つ
・内臓を働かせる
・血を巡らせる
という重要な役割があります。
この気が不足すると、
・身体を温める力が弱くなる
・血の流れが滞る
・内臓の働きが低下する
といった状態が起こり、結果として冷えが生じます。
気が不足しやすい生活習慣には、次のようなものがあります。
・慢性的な疲労
・睡眠不足
・食事量が少ない、または偏っている
・冷たい飲み物や食べ物が多い
・ストレスが続いている
これらは一つひとつは小さなことでも、積み重なることで冷えやすい体質を作ってしまいます。
冷え症と「お腹」の深い関係
冷え症の方を触診すると、お腹が冷えているケースが非常に多く見られます。
東洋医学では、お腹はエネルギーを作り出す中心と考えられており、ここが冷えると全身に影響が出ます。
お腹が冷えると、
・消化吸収が弱くなる
・気が十分に作られなくなる
・さらに身体が冷える
という悪循環に陥ります。
「手足だけでなく、お腹が冷たい」
「下腹部が特に冷える」
このような感覚がある方は、身体の中心から冷えが始まっている可能性があります。
冷え症ケアの要となるツボ「関元」
冷え症の東洋医学的ケアで欠かせないツボが、**関元(かんげん)**です。
関元
身体の中心線上で、おへそから指幅4本下がったところにあります。
関元は、
・身体を温める
・気を補う
・内臓の働きを助ける
といった働きが期待できる重要なツボです。
東洋医学では、関元は「身体の土台」とも考えられており、冷え症だけでなく、
・疲れやすい
・体力が落ちてきた
・回復力が弱くなった
と感じる方にも用いられます。
関元を使ったセルフケアの考え方
関元は、ご自宅でのケアにも非常に適しています。
・お腹を冷やさない
・入浴後に手で温める
・カイロでじんわり温める
大切なのは「強く刺激すること」ではなく、「継続して温めること」です。
関元を温めることで、身体の内側から緩み、全身が温まりやすくなります。
鍼灸では冷えをどう整えるのか
鍼灸施術では、冷えている部分だけを施術することはほとんどありません。
冷えは結果であり、原因は別のところにあることが多いためです。
・お腹の状態
・背中の緊張
・手足の冷え方
・全身の巡り
これらを総合的に確認し、身体全体のバランスを整えていきます。
その結果として、
「自然に手足が温かくなってきた」
「以前より冷えにくくなった」
と感じる方が多くいらっしゃいます。
冷え症は時間をかけて整えていくもの
冷え症は、長年の生活習慣や身体の使い方の積み重ねで生じることがほとんどです。
そのため、一度の施術ですべてが変わるものではありません。
しかし、
・冷えにくい身体を作る
・不調が出にくい状態を保つ
という方向へ身体を導くことは十分可能です。
冷えは、身体からの大切なサインです。
「仕方がない」と諦めず、身体の内側から整える東洋医学的ケアを取り入れてみてください。






