秋から冬にかけて、「気分が沈みやすい」「やる気が出ない」「朝起きるのがつらい」と感じる方が増えます。
これは**季節性うつ(冬季うつ)**と呼ばれ、日照時間の減少や気温の低下が体と心に影響することが大きな原因です。
近年では、仕事のストレスや冷え・自律神経の乱れも関係しており、男女問わず多くの方が悩まれています。
■ なぜ秋冬になると気分が落ち込みやすくなるのか?
東洋医学では、季節の変化と心身の状態は深くつながっていると考えます。
秋は「肺」、冬は「腎」と関係が深く、この二つの臓の働きが落ちると、呼吸や血流が滞り、全身のエネルギー(気)が巡らなくなります。
その結果、「やる気が出ない」「不安が強い」「涙もろい」といった心の不調が現れやすくなるのです。
また、秋冬は外気の冷えにより体が縮こまり、血流が悪化しやすい季節です。
特に首・肩・背中のこわばりは、自律神経の乱れを引き起こし、気分の落ち込みをさらに助長します。
■ 季節性うつに多い身体のサイン
季節性うつは、心の問題だけでなく、体にも明確なサインが現れます。
- 朝起きても疲れが取れない
- 日中の眠気や倦怠感が強い
- 体が冷えやすく、肩こり・頭痛が増える
- 食欲が不安定になり、甘い物や炭水化物を多く摂る
- 顔色が悪く、肌がくすむ
- ため息が多くなる
これらは「気」と「血(けつ)」の巡りが悪くなり、心身のバランスが崩れているサインです。
つまり、体を温め、滞った気血を整えることが、季節性うつのケアにつながります。
■ 東洋医学で考える「季節性うつ」の原因
東洋医学の視点から見ると、季節性うつは主に以下の3つのバランスの乱れが関係しています。
- 気の滞り(気滞)
ストレスや寒さで気が巡らず、胸のあたりが重く感じる。イライラや落ち込みが交互に出やすい。 - 血の巡りの悪化(瘀血)
体が冷えて血行が滞ると、頭痛・肩こり・月経痛などの痛みを伴う。 - 腎の弱り(腎虚)
冬になると腎の働きが弱まり、気力・体力の低下、集中力の欠如、うつっぽい症状が出やすくなる。
この3つの要素を整えることで、体だけでなく心の安定も取り戻すことができます。
■ 季節性うつにおすすめのツボ
ここでは、自宅でもケアできる3つの代表的なツボをご紹介します。
どれも気血を巡らせ、体を内側から温める働きがあります。
① 内関(ないかん)
手首のしわから指3本分上がったところ、2本の筋の間にあります。
自律神経を整え、胸のつかえや不安感、イライラを鎮める効果があります。
季節性うつで「気分の波」が激しい方におすすめです。
② 三陰交(さんいんこう)
内くるぶしの中心から指4本分上がったところ。
冷え・むくみ・月経不順・不眠などに効果があり、特に「冷えによる落ち込み」に有効です。
夜の入浴後に軽く押すと、リラックス効果が高まります。
③ 百会(ひゃくえ)
頭のてっぺん、両耳を結んだ線の真ん中にあります。
精神安定や集中力の向上、全身の気の流れを整える作用があり、心のバランスを取り戻すツボです。
深呼吸をしながら優しく押すとよいでしょう。
■ 鍼灸施術でのアプローチ
鍼灸院では、問診と脈・舌・腹部の状態を確認し、体質や症状の根本原因を見極めたうえで施術を行います。
季節性うつの方は、多くの場合「気の停滞」と「冷え(陽気の不足)」が見られます。
施術では次のような流れを大切にしています。
- 腹部や背中の温め
お灸や温熱で「腎」を温め、全身の冷えを解消します。
温かさを感じることで、副交感神経が働き、心身が自然にゆるみます。 - 頭部・手首まわりの調整
百会や内関などを用いて、自律神経のバランスを整えます。
施術後は「頭が軽くなった」「視界が明るくなった」と感じる方も多いです。 - 胃腸の働きを整える
食欲や消化の乱れを整えるため、足三里(あしさんり)などを使い、「気」を補っていきます。
エネルギーが巡ることで、自然とやる気も戻ってきます。
鍼灸は自律神経やホルモンバランスにも作用するため、薬を使わずに心身を整える自然な方法として注目されています。
■ セルフケアのポイント
季節性うつを防ぐには、施術と合わせて日常のセルフケアも大切です。
- 朝はカーテンを開けて日光を浴びる(セロトニン活性)
- 湯舟に15分以上つかって体を芯から温める
- 夜更かしを避け、睡眠リズムを整える
- 甘いものや冷たい飲み物を控え、温かい食事を意識する
- 無理のない軽い運動(散歩やストレッチ)を取り入れる
これらを心がけることで、鍼灸施術の効果が長持ちし、心の安定にもつながります。
■ 通院の目安
季節性うつは、すぐに改善するものではありません。
多くの方は週1回の施術を3か月ほど続けることで、徐々に気分の安定・睡眠の改善・体の温まりを感じ始めます。
特に「冷え」「肩こり」「眠れない」といった身体症状が軽くなると、心の落ち込みも自然と和らいでいきます。
■ まとめ
秋冬の落ち込みは、「心の弱さ」ではなく、季節による体の変化が関係しています。
気温の低下や日照不足で体が冷え、気血の巡りが悪くなると、心にも影響が及ぶのです。
ツボ押しや鍼灸で体を整えることで、気分の落ち込みが軽くなり、朝の目覚めもスッキリします。
心と体はつながっています。
「最近なんだか元気が出ない」「やる気が続かない」と感じたら、どうぞ早めにご相談ください。
当院では、あなたの体質や生活リズムに合わせた施術で、季節の変化に負けない心身づくりをサポートいたします。