― 不調が続く背景には「胃腸の弱り」が隠れているかもしれません ―
「最近、疲れが取れにくい」
「食後に胃が重く、しばらく動きたくなくなる」
「寝ているのに朝からだるさが残る」
このような状態が続いている方は、胃の疲れが深く関係している可能性があります。
胃の不調というと、胃痛や胃もたれ、胸やけなど、はっきりとした症状を想像される方が多いかもしれません。しかし実際には、「なんとなく調子が悪い」「原因がはっきりしない不調」として現れることも少なくありません。
東洋医学では、胃腸は単なる消化器官ではなく、全身の調子を支える土台と考えます。そのため、胃が疲れてくると、身体のあちこちに影響が広がり、慢性的な不調につながりやすくなるのです。
東洋医学で考える「胃」と「脾」の重要性
東洋医学では、胃と脾(ひ)をまとめて「脾胃(ひい)」と呼びます。
脾胃は、食べ物を消化・吸収し、身体を動かすためのエネルギーや血の材料を作り出す、非常に重要な役割を担っています。
脾胃の働きが整っていると、
- 食後に過度な眠気やだるさが出にくい
- 疲れが翌日に残りにくい
- 手足が冷えにくい
- 筋肉や内臓がスムーズに働く
といった状態を保ちやすくなります。
一方で、脾胃が弱ってくると、食事から必要な栄養やエネルギーを十分に取り出せなくなります。その結果、胃腸の不調だけでなく、全身のだるさ、肩こり、集中力の低下、気分の落ち込みなど、一見すると胃と関係なさそうな症状が重なって現れやすくなります。
胃の疲れが起こりやすい現代の生活背景
現代の生活は、知らず知らずのうちに胃腸へ負担をかけています。
胃に負担をかけやすい要因
- 食べ過ぎ、飲み過ぎ
- 早食いや、よく噛まない食事
- 冷たい飲み物や生ものの摂りすぎ
- 食事時間が不規則
- デスクワークやスマートフォンによる長時間の緊張
- 精神的ストレスの継続
特に、冷えとストレスは胃腸の働きを低下させやすい大きな要因です。
「若い頃は平気だった食事量がつらくなった」「少し無理をすると胃が重くなる」という変化は、年齢のせいだけではなく、胃が疲れてきているサインと考えることができます。
胃の疲れが全身の不調につながる理由
東洋医学では、胃腸は「身体の中心」と捉えられています。
この中心が弱ると、身体全体のバランスが崩れやすくなります。
例えば、
- 胃が弱る → エネルギー不足 → 疲れやすい
- 消化吸収が低下 → 巡りが悪くなる → 肩こり・首こり
- 胃腸が冷える → 内臓の働きが落ちる → 睡眠の質が低下
このように、胃の疲れは一つの症状だけでなく、複数の不調を同時に引き起こす原因になりやすいのです。
胃と心の状態は密接につながっています
東洋医学では、胃腸は精神的な影響を受けやすい臓器と考えます。
考え事が多い、緊張が抜けない、常に頭が働いている状態が続くと、胃腸の動きは自然と鈍くなります。
- 休んでいるのに気が休まらない
- 食事中も仕事や家事のことを考えてしまう
- 無意識にお腹や肩に力が入っている
このような状態では、胃は十分に休めず、慢性的な疲れへとつながっていきます。
「ストレスを感じると胃の調子が悪くなる」という経験がある方は、心と胃の深い関係を実感しやすいかもしれません。
鍼灸で考える胃の疲れへの施術の視点
鍼灸では、胃だけを局所的に見るのではなく、身体全体の状態を確認しながら整えていくことを大切にしています。
施術の考え方
- お腹や背中の緊張をやさしくゆるめる
- 胃腸の働きを妨げている冷えを整える
- 身体が自然に休める状態をつくる
刺激は強すぎず、身体の反応を見ながらソフトに行います。
施術中に「お腹が動き出す感じがする」「呼吸が深くなる」「身体が温かくなる」と感じる方も多く、胃の緊張がゆるむことで全身も一緒にリラックスしていきます。
胃の疲れに関係する代表的なツボ
胃腸のケアでは、日常的に意識しやすいツボを知っておくことも役立ちます。
● 足三里(あしさんり)
膝蓋骨のすぐ外側にあるくぼみから、指幅4本下がったところで、すねのふちにあります。
足三里は、東洋医学では胃腸の働きを整える代表的なツボとして知られています。
胃の疲れだけでなく、全身のだるさや疲労感が強いときにも使われることが多く、「身体の元気を支えるツボ」として重視されています。
● 中脘(ちゅうかん)
身体の中心線上で、おへそから指幅5本上がったところです。
中脘は、胃の真上に位置するツボで、胃の重さや食後の不快感があるときに反応が出やすい場所です。
お腹の緊張をゆるめ、胃が本来の動きを取り戻しやすくする働きが期待されます。
※ツボは強く押す必要はなく、心地よい程度の刺激で十分です。
胃を整えることで期待できる変化
胃腸の状態が整ってくると、
- 食後の重だるさが軽くなる
- 疲れが溜まりにくくなる
- 肩や首のこわばりが出にくくなる
- 眠りが安定しやすくなる
といった変化が期待できます。
東洋医学では、「まず胃を整えること」が体調管理の基本とされています。
日常生活でできる胃をいたわる習慣
施術とあわせて、日常生活で胃をいたわる意識も大切です。
- 食事は腹八分を目安にする
- 冷たい飲み物を控え、常温を意識する
- よく噛んでゆっくり食べる
- 夜遅い食事を避ける
こうした小さな積み重ねが、胃の負担を大きく減らしてくれます。
胃の疲れを見過ごさないために
胃の不調は、「忙しいから仕方ない」「年齢のせい」と見過ごされがちです。
しかし東洋医学では、胃の疲れは身体からの大切なサインと考えます。
原因がはっきりしない不調が続いている方ほど、一度胃腸の状態に目を向けてみることが、体調改善への第一歩になることも少なくありません。
胃を整えることは、全身を整えることにつながります。






