60代女性の強い疲労感と多岐にわたる症状に対する鍼灸治療事例

治療の流れ

問診

60代の女性患者さんが来院されました。主訴は、強い身体の疲労感と怠さで、起きているのも辛く、動悸が増えているとのことでした。また、クーラーが苦手で、仕事が辛い、胃が重く感じ、食後に眠くなること、夜中に目が覚めることなどの症状を訴えていました。

触診

まず、腹診を行いました。その結果、瘀血(血液の流れが滞っている状態)が確認されました。次に、触診を通じて骨盤のうっ血が見られました。また、身体全体に炎症が広がっていること、頭部にも瘀血が存在することが判明しました。さらに、右の胸鎖乳突筋の緊張も確認されました。これらの情報から、胃の気が低下している可能性が高いと考えました。

治療

患者さんの状態を総合的に判断し、以下の治療を行いました。

  1. 瘀血を除く処置: 腹部および頭部の瘀血を改善するために、適切な経穴に鍼を施しました。
  2. 骨盤のうっ血を改善する処置: 骨盤周辺の血流を促進するための経穴に鍼を行いました。
  3. 身体の炎症を緩和する処置: 全身の炎症を抑えるために、炎症に関連する経穴に鍼を施しました。
  4. 胸鎖乳突筋の緊張を解消する処置: 右の胸鎖乳突筋の緊張を緩和するために、該当する経穴に鍼を行いました。
  5. 胃の気を向上させる処置: 胃の機能を改善するために、胃に関連する経穴に鍼を施しました。

治療内容のポイント

瘀血を除く処置

瘀血は、血液の流れが滞り、組織に酸素や栄養が行き渡らない状態を指します。瘀血を除くことで、全身の血流が改善し、疲労感や怠さが軽減されます。

骨盤のうっ血を改善する処置

骨盤のうっ血は、骨盤周辺の血流が滞っている状態です。これを改善することで、下半身の血流が促進され、身体全体の代謝が向上します。

身体の炎症を緩和する処置

身体全体の炎症は、疲労感や痛みの原因となります。炎症を緩和することで、身体の回復力が向上し、疲労感が軽減されます。

胸鎖乳突筋の緊張を解消する処置

胸鎖乳突筋の緊張は、首や肩のこり、頭痛の原因となることがあります。これを解消することで、上半身の血流が改善され、全身の疲労感が軽減されます。

胃の気を向上させる処置

胃の気が低下すると、消化機能が低下し、食後の眠気や胃の重さが生じます。胃の気を向上させることで、消化機能が改善され、食後の眠気や胃の重さが軽減されます。

治療の効果

治療後、患者さんからは症状が緩和されたとの連絡をいただきました。特に、起きているのが辛いと感じることが少なくなり、動悸も軽減されたとのことでした。胃の重さも改善され、食後の眠気が軽減されたと報告されました。

この治療事例を通じて、問診と触診の重要性を改めて実感しました。患者さんの症状を丁寧に聞き取り、触診を通じて具体的な状態を把握することで、最適な治療法を選択し、効果的な治療を提供することができます。

治療の考察

今回の治療では、60代女性の患者さんが訴える多岐にわたる症状に対して、問診と触診を通じて全体像を把握し、個別の症状に対して的確な治療を行いました。以下に治療の考察を示します。

問診と触診の重要性

患者さんの主訴である「強い疲労感」「怠さ」「動悸」「クーラーが苦手」「胃の重さ」「食後の眠気」「夜中に目が覚める」といった症状は、単一の原因ではなく、複数の要因が絡み合っていることが予想されました。問診では、詳細な症状の聞き取りを行い、患者さんの生活習慣や環境要因についても確認しました。この段階で得られた情報は、治療方針を決定する上で非常に重要な役割を果たしました。

触診では、腹診により瘀血の存在を確認し、全身の触診を通じて骨盤のうっ血や身体の炎症、頭部の瘀血、右胸鎖乳突筋の緊張を見つけ出しました。これらの触診結果から、患者さんの症状が血液循環の滞りや身体の炎症に起因していることが明確になりました。

治療方針の決定

問診と触診の結果を総合的に判断し、以下の治療方針を決定しました。

  1. 瘀血を除く処置: 血液の流れを改善し、酸素や栄養の供給を促進することで、全身の疲労感を軽減する。
  2. 骨盤のうっ血を改善する処置: 骨盤周辺の血流を促進し、下半身の血液循環を改善する。
  3. 身体の炎症を緩和する処置: 全身の炎症を抑え、疲労感や痛みの原因を取り除く。
  4. 胸鎖乳突筋の緊張を解消する処置: 首や肩のこり、頭痛の原因となる筋肉の緊張を緩和し、上半身の血流を改善する。
  5. 胃の気を向上させる処置: 消化機能を改善し、胃の重さや食後の眠気を軽減する。

治療効果の確認

治療後、患者さんからは症状が緩和されたとの連絡をいただきました。特に、起きているのが辛いと感じることが少なくなり、動悸も軽減されたとのことでした。胃の重さも改善され、食後の眠気が軽減されたと報告されました。これらの改善は、治療が効果的であったことを示しています。

全体の考察

今回の治療事例を通じて、問診と触診の重要性を再確認しました。患者さんの症状を丁寧に聞き取り、触診を通じて具体的な身体の状態を把握することで、最適な治療方針を決定し、効果的な治療を提供することができました。

今後も、問診と触診を大切にし、個々の患者さんの状態に合わせた治療を提供していきたいと思います。この事例が、鍼灸治療の効果を示す一例として、多くの方々に参考になれば幸いです。